美術制作をしている人間による、野外記録のサイトです。録音と書き取りを掲載しています。
録音は、主に屋外の環境音と列車の車内音で、最近のものは大半がバイノーラルです(キャプションの頭にBがつく音声はバイノーラル、下記参照)。書き取りは、あたりの様子や雑感などをその場で行動記録的に書き留めた、外出中のメモの書き起こしが中心です。
尚、記録者は普段は旧仮名遣いを使っていますが、このサイトでは、入力の簡便と画面上での一般的な読みやすさを重視し、すべて新仮名遣い・新字体に改めて書き起こしています。
記録は、「時期から」で年ごとに、「場所から」で地域ごとに、それぞれ分類しています。一応のところ、どちらのメニューからもすべてのコンテンツにアクセスできるようにしているつもりです。
記録時期は主に令和2年以降ですが、平成24年から26年の間に、専ら鉄道趣味的な関心から録った列車の音も、近年の記録と同じように扱って掲載しています。
令和5年5月に、少し遡って記録を整理し、このサイトを作りました。
一人の人間の経験で繋がった、特定の場所/特定の時間に固有の手触りのようなものを、できる限り具体的なまま、また主観性を損ねないように、かつ仔細に、保存してみようとする試みです。私たちの日常(において特に野外)では、極端に些末な身辺事象、一時の注目に値する光景、ちょっとした回想、多少専門的な内容の思考、脈絡の無い思い付き、見当違い、などといったことがらが、絶え間なく連続していきます。限定的にであれ、それらを現実上の展開に忠実に、極力仔細に書き残していこうとする時間を設けることは、日常の認識におけるすべての要素を、地続きに、時に等価に、捉えてみようとする実践でもあります。
記録者である私は、常に個人であり、緩やかな地域社会以外の何のコミュニティにも属していません。美術作家としてもまるきり無名ですから、実質、肩書の無い一人の漂泊者です。その様な人間による、非匿名的な小さい視線が、時代や社会の何かを、いわゆる歴史とは違った形で記録し得るだろうと考えて、書き取りや録音を続けようとしています。これらの記録が、地方史や、あるいはもっと大きな歴史と、個人史とが、時間的・空間的に滑らかにつながっていくための素材の一つとして機能することがあれば、それが一番理想的なことだと思っています。
近年の録音について
令和3年以降の録音は、ほとんどの場合バイノーラルです。バイノーラルマイクのユニットはイヤフォンの殻に無指向性のコンデンサマイクを仕込んだもので、これを耳に装着して録音しています。バイノーラルのデータには、キャプションの頭に「B」を付けています。スピーカーではなくヘッドフォン・イヤフォン類での再生をお勧めします。
データは基本的にすべて一発録りで、トリミングも含めてまったく編集していません。機材を更新したため、令和5年の秋頃から多少音質が良くなっています。
各地で一分三十秒間録音している環境音は、いくつかの例外を除いて、ほとんどは直立状態で静止しての録音です。
列車の車内音の方では、録音者は録音中も自然な状態のまま過ごしており、検札を受けたり、混んだ車内で人に押されたりしています。鞄やポケットから筆記具を出してその録音についてのメモを書いている物音が入っているものも稀にあります。